広がるクワイエットアワーの取り組み

  • 2024年2月2日
  • 2024年1月29日

 近年、感覚過敏の方が生きやすい環境を作るためのクワイエットアワーが注目されています。クワイエットアワーは、視覚過敏や聴覚過敏、触覚過敏などの方に向けた取り組みです。

本記事では、クワイエットアワーが広まった背景や導入事例、クワイエットアワーを実践するための条件について解説します。

クワイエットアワーとは?

 クワイエットアワーとは、感覚過敏のために音や光の刺激を制限し、営業する取り組みです。たとえば、施設内の照明を暗くしたり、BGM音を下げたりといった取り組みがなされています。

クワイエットアワーは現在、スーパーマーケットやドラッグストアなどだけでなく、動物園や水族館などでも取り入れられています。

また、国内のみならずイギリスやニュージーランド、スイスなどでも取り組みが広がっているのが特徴です。

また、感覚過敏の方だけでなく、控えめな刺激を好む高齢者の方にとっても利用しやすいような工夫がなされています。

クワイエットアワーの背景

 クワイエットアワーが生まれた背景には、発達障害に苦しむ人々の生活が関係しています。発達障害とは、生まれながらに見られる脳機能の障害であり、行動面や情緒面に特徴がある状態です。

2012年の文部科学省の調査によると、発達障害とされる児童は40人学級で2〜3人の割合で存在するとされています。

発達障害は、見た目から判別することが難しく、人によって特徴が異なります。子どものときは気づかず、大人になって診察を受け、自身が発達障害と気づく人も一定数いるといいます。

発達障害によって、本人は悪気がないにもかかわらず、第三者からはネガティブに捉えられることもあるでしょう。

現在、発達障害の方を理解し、生きやすい環境作りをするためにクワイエットアワーが広がり始めています。

クワイエットアワーと感覚過敏

 感覚過敏とは、感覚のはたらきに偏りがあることで、多くの人が平気な光や音などの刺激を過剰に受け取ってしまう状態のことを指します。

また、感覚過敏には以下のような種類があります。

  • 視覚過敏
  • 聴覚過敏
  • 嗅覚過敏
  • 味覚過敏
  • 触覚過敏

中には、複数の感覚を同時に持ち合わせている人もおり、そのことで体調を壊し、家から外出できなくなる方もいらっしゃいます。

視覚過敏

視覚過敏は、目が受ける刺激が過敏になる状態です。
たとえば、スマホやパソコンの画面が眩しく、目に刺さるような刺激を受ける場合があります。

中には、スマホやパソコンの画面の明るさを暗く調整しても眩しさを訴える方がいるでしょう。

また、太陽の光や白い紙を見たり、人気の多い町中にいたりするだけで気分を悪くする方もいます。

聴覚過敏

聴覚過敏は、耳が受ける刺激が過敏になる状態です。
たとえば、時計の針や蛍光灯の音などが気になったり、大きな音自体を恐怖に感じたりする場合があります。

日常生活で自然と耳に入る音が気になり、体調不良になって外出が難しくなる方もいます。

嗅覚過敏

嗅覚過敏は、鼻が受ける刺激が過敏になる状態です。
たとえば、服の柔軟剤の匂いで気分が悪くなったり、化粧品や芳香剤などで吐き気を催したりすることがあります。

中には、人が多い電車やバスに乗れなくなり、日常生活に支障が出る方もいます。

味覚過敏

味覚過敏は、舌が受ける刺激が過敏になる状態です。
味覚が過敏になることで、食べられるものが限定される方が多くなります。

普段食べるものに含まれる調味料や味が異なるだけで、食べ物が喉を通らなくなること方もいます。

触覚過敏

触覚過敏は、手や足などが受ける刺激が過敏になる状態です。
たとえば、人と握手するだけで嫌悪感を覚えたり、側に近寄られるだけでその場から逃げたくなったりする場合があります。

また、服や靴下、下着などの重さや窮屈さ、素材の感触でも苦痛を感じたり、風や雨が当たるだけで不快感や痛みを訴える方もいます。

クワイエットアワー導入事例

 クワイエットアワーは、国内でさまざまな場所で取り入れられています。
以下では3つの事例を紹介します。

  • ツルハドラッグ上越春日新田店の取り組み
  • さいたま水族館の取り組み
  • 豊橋総合動植物園の取り組み

いずれも、感覚過敏の方に向けて営業時間を制限したり、休館日に来場してもらうなどの工夫がなされています。

ツルハドラッグ上越春日新田店

ツルハドラッグ上越春日新田店では、視覚や聴覚が過敏なお客様からの「照明が眩しくて商品が見えづらい」「店内のBGMがうるさくて苦痛」などの声を受けて、クワイエットアワーを実施。

毎週土曜日の午前9時〜10時は、照明の明るさを抑え、BGMを流さない取り組みを行っています。この取り組みにより、買い物に困難が生じているお客様が、以前よりも訪問しやすくなっています。

さいたま水族館

さいたま水族館では、大きな音や強い光が苦手なお子様のために、クワイエットアワーを実施しています。

水族館の休館日を利用し、感覚過敏の方だけが入場できるよう、BGM・館内放送・展示説明の音声をオフにし、スポットライトが来場者に当たらないような工夫が施されています。

この取り組みによって、通常の営業日に来場できないお子様が水族館を楽しめるようになりました。

豊橋総合動植物園の取り組み

豊橋総合動植物園では、障害によって来園が難しい方を対象に、月3回の休園日を利用して来場できる仕組みを作っています。

動植物園は家族連れが多いため、乳幼児の泣き声などが響き渡ります。そのため、聴覚過敏の方の場合、耐えきれずに身動きが取れなくなる方がいらっしゃいます。

そこで、一般の方の入場を制限し、感覚過敏の方を対象にクワイエットアワーを実施。音に敏感な方でも動植物園を楽しむことができるようになりました。

国内では初の試みだったクワイエットアワーは、現在でも継続されています。

クワイエットアワーを取り入れるためには何が必要?

 クワイエットアワーを実施するためには様々な困難があります。特に、多様なお客様がいる商業施設などで環境を整備することは難しいとされています。

クワイエットアワーが実施できるかは以下3つの条件を満たしているかどうかによって変わります。

  • 感覚過敏の方が利用したいと思えるエリアか
  • ハードルとなるものがどれほどあるか
  • 現実的に対処できるか

感覚過敏の方が利用したいと思える場所があるかどうかを判断し、現時点でどのようなハードルがあるかを見極めることが必要です。

また、そのハードルに対し、現実的に実行できるかも判断しなければなりません。

感覚過敏の方が利用したいと思えるエリアがあるか

クワイエットアワーを実施すべきかどうかは、ニーズの有無によって判断できます。たとえば、以下のようなエリアが施設にある場合、クワイエットアワーをおこなうべきかが判断できるでしょう。

  • 食料品エリア
  • 日用品・学用品エリア
  • 服・靴エリア

いずれも、あらゆる人が日常生活をおこなう上で関連のあるものです。上記のエリアの有無を判断軸の1つにおくと良いでしょう。

ハードルとなるものがどれほどあるか

感覚過敏の方に影響を及ぼすものがどれほどあるかを確認しましょう。商業施設の場合、主に以下のものが刺激を与えやすいとされています。

  • BGM
  • 館内アナウンス
  • ディスプレイ
  • 小さいお子様の泣き声
  • 蛍光灯
  • スポットライト
  • 壁や床の反射光
  • 商品のにおい
  • 色の濃い掲示物

視覚過敏や聴覚過敏などの方にとって、刺激を与えやすいものがどれほどあるかを確認することが大切です。

現実的に対処できるか

クワイエットアワーを実施するにあたっては、以下の事項が現実的に対処できるかを判断しなければなりません。

  • BGMの音量を下げる
  • 必要最小限の館内アナウンスにする(迷子のアナウンス、防災アナウンスのみ)
  • 大声の接客を控える
  • 接客時に突然の声がけをしない
  • ディスプレイの音量を下げる
  • 蛍光灯を消灯する、もしくはカバーをつける
  • スポットライトを消す
  • ディスプレイを必要最小限にする、もしくはオフにする
  • 色の濃い掲示物を撤去する

上記を実践しても商業施設の経営に影響が出ない場合は、クワイエットアワーを取り入れる余地があるでしょう。

まとめ

クワイエットアワーとは、感覚過敏の方が生活しやすい環境作りをおこなうことです。たとえば、視覚過敏の方に向けて施設の明るさを暗くしたり、聴覚過敏の方に向けて館内放送のボリュームを下げたりすることが挙げられます。

感覚過敏の方は、一般の人が気にならないような音や光などに過剰に反応してしまいます。このことを十分に理解し、感覚過敏の方でも生きやすい環境を作っていくことが大切です。

自施設でもクワイエットアワーを取り入れる際は、以下の点について考えてみてください。

  • 感覚過敏の方が利用したいと思えるエリアか
  • ハードルとなるものがどれほどあるか
  • 現実的に対処できるか

感覚過敏の方が住みやすい環境を作るために、一人ひとりができることを実践していきましょう。

[参考URL・資料]
クワイエットアワー実施のためのサポートブック
感覚過敏とは?センサリールーム、クワイエットアワーの必要性は?
”クワイエットアワー”とは?「感覚過敏」の人でも安心して生活できるように…
さいたま水族館で「クワイエットアワー」 感覚過敏の子どもに配慮して音声なし、照明も調整
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