医師の自己研鑽、8割以上が「労働」と認識 ~働き方改革には期待薄~

  • 2023年10月20日
  • 2023年11月8日

 医師の働き方をめぐっては、長時間労働や不規則な勤務形態が問題視されて久しい。医師の働き方改革の施行を来年度(2024年度)に控える中、今年5月には専攻医が長時間労働により精神障害を発症して自殺するという痛ましい事件が明らかとなった。Medical Tribuneウェブでは、2023年9月19〜26日に医師会員を対象として働き方に関するアンケートを実施。ほとんどの医師が現在の働き方は過重であると感じており、8割以上が学会発表準備などの自己研鑽は労働に該当すると回答した。一方、働き方改革により過重労働が解消されるとした割合は4割に届かなかった(関連記事:「過労自殺問題、医師の自己研鑽は労働なのか」)。

9割以上が過重労働を実感、原因は「緊急対応」「患者説明」が上位

 今回の調査は701人から回答を得た。最も回答者が多かった診療科は神経内科(10.7%)で、以下、救急医療・ICU(8.0%)、脳神経外科(7.7%)、消化器外科(7.7%)、腎臓内科(7.0%)の順だった。

 医師は他の職種と比べ働き過ぎかどうかを聞いたところ、「思う」が45.4%、「ある程度思う」が46.8%と、9割以上が働き過ぎだと感じていた。診療科別では、「思う」「ある程度思う」と回答したのは脳神経外科が98.1%、呼吸器内科が97.5%、血液内科が97.2%だった(図1)。

図1. 診療科別に見た過重労働、自己研鑽、働き方改革に対する認識

過重労働の原因については、「救急や入院患者への緊急対応」が61.5%、「患者および家族への説明対応」が50.2%、「カルテ・診断書などの書類作成」が45.8%、「国民の医療への過依存体質」が45.6%、「医師数の不足や偏在」が42.2%だった(図2)。

図2. 過重労働の原因

自己研鑽、8割以上が労働と回答

 専攻医の自殺事案で問題となった論文執筆・学会発表準備などの「自己研鑽」を労働と思うかどうかを聞いたところ、「思う」が36.2%、「ある程度思う」が47.2%と、8割以上が自己研鑽は労働に該当すると回答した(図3)。診療科別では、「思う」「ある程度思う」と回答したのは循環器内科が97.0%、血液内科が91.0%、消化器内科が87.0%だった(図1)。

図3. 自己研鑽と労働の関係

 過重労働を解消するために必要な施策を聞いたところ、「他職種へのタスク・シフティング」が58.3%、「医師の適正配分」が40.1%、「国民の受診行動を抑制する施策」が37.5%だった。来年度からの働き方改革が過重労働に及ぼす影響については、「解消されると思う」と回答したのは34.7%(「思う」4.9%、「ある程度思う」29.8%)にとどまった。

 また、働き方改革への期待度別に過重労働解消のために必要な施策を見たところ、「解消されると思う」と回答した人では「勤怠管理の厳格化」が50.0%、「思わない」では「国民の受診行動を抑制する施策」が48.0%とそれぞれ他の選択肢と比べて高く、必要と考えている施策の実現可能性が改革への期待度に反映されている可能性が示唆された(図4)。

図4. 働き方改革への期待度別に見た過重労働解消のために必要な施策

平山茂樹
出典: Medical Tribune ウェブ

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