患者への困り事、診療科により差異
- 2023年9月15日
- 2023年9月14日

医師と患者の良好なコミュニケーションは、よりよい医療を実現する上で不可欠である。一般の人の医療や健康への関心が高まる中、両者のコミュニケーションはこれまで以上に重要視される。Medical Tribuneウェブでは2023年8月29~30日に、医師会員を対象に、患者とのコミュニケーションに関するアンケートを実施。診療科によって「コミュニケーション」の定義が異なる可能性が示された他、糖尿病・内分泌科の医師の6割超が患者の間違った知識や情報に困っているなど、診療科により困り事に特徴が見られた。
9割が共同意思決定を重視
今回の調査では、医師会員987人から回答を得た。回答者が多かったのは、整形外科(11.1%)、精神・神経科(10.0%)、消化器内科(8.4%)、循環器内科(7.5%)だった。
診療時に患者とコミュニケーションが取れているかを聞いたところ、「非常にそう思う」が21.5%、「ややそう思う」が64.8%だった。
患者にとって十分な診療時間が設けられていると思うかについては、「非常にそう思う」が16.6%、「ややそう思う」が48.0%だったのに対し、「あまり思わない」は31.3%、「全く思わない」は4.1%だった。
普段の診療で、「共同意思決定(SDM)」をどの程度重視しているかを尋ねたところ、「非常に重視している」が30.1%、「やや重視している」が59.8%と全体の9割ほどが重視していると回答した。
診療科別に見ると、呼吸器内科では診療時に患者とコミュニケーションが取れていると回答した割合が消化器外科に続き第2位だった(91.5%、図1)。その一方で、患者にとって十分な診療時間が設けられていると思うと回答した割合は第8位(66.0%)、SDMを重要視していると回答した割合は第13位(87.2%)と順位を下げた。また、一般内科では、患者にとって十分な診療時間が設けられている、SDMを重要視しているがいずれも第1位であったのに対し、診療時に患者とコミュニケーションが取れている割合は第8位(87.2%)と後退。診療科によって「コミュニケーション」の定義が異なる可能性がうかがえた。
図1.診療科別に見たコミュニケーション、診療時間、SDMの認識

神経内科では説明の無理解、精神・神経科では自己判断での中断に困惑
患者とのコミュニケーションにおいて困っていることとして、「間違った知識/情報を持っている」(44.5%)が最も多く、「説明を理解してもらえない」(34.3%)、「治療の継続を患者の判断で中断(変更)してしまう」(28.3%)、「病状を十分に伝えてもらえない」(21.6%)、「全ての判断を医師任せにする」(17.7%)が続いた(図2)。
図2.患者とのコミュニケーションでの困り事(複数回答可)

診療科別に見ると、「間違った知識/情報を持っている」は糖尿病・内分泌科(60.3%)、「説明を理解してもらえない」は神経内科(46.4%)、「治療の継続を患者の判断で中断(変更)してしまう」は精神・神経科(40.4%)、「病状を十分に伝えてもらえない」(29.8%)と「全ての判断を医師任せにする」(34.0%)は泌尿器科で困り度が最も高かった(図3)。
図3.診療科別に見た患者とのコミュニケーションでの困り事

良好なコミュニケーションにもかかわらず自己判断で治療離脱例も
患者とのコミュニケーションの状況別に分析したところ、十分なコミュニケーションが取れていると思っている医師ほど、診療時間が十分に確保できている、SDMを重視していると回答する傾向が見られた。
また、患者とのコミュニケーションが不十分であると、患者の判断で治療を中断(変更)してしまう割合は高まるが、コミュニケーションが十分に取れている(17.0%)、やや取れている(29.7%)場合でも、自己判断による治療の中断(変更)が一定数いるという課題が浮き彫りになった(図4)。
図4.コミュニケーションの状況別に見た患者とのコミュニケーションでの困り事

(比企野綾子)
出典: Medical Tribune ウェブ