「医師の働き方改革」に揺れる循環器救急医療~CVITがアンケート結果を公表~

  • 2023年8月18日
  • 2023年9月6日

 来年(2024年)4月から医師にも適用される働き方改革をめぐり、勤務医に対し新たに設けられる時間外労働時間の上限規制に注目が集まっている。
7月28日、東京都で開かれた日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)のプレスセミナーでは、CVIT理事長で帝京大学循環器内科主任教授の上妻謙氏、同副理事長で岩手医科大学循環器内科分野主任教授の森野禎浩氏が、冠動脈カテーテル治療を行っている会員所属施設を対象に実施したアンケート結果を報告。タスクシフトやタスクシェアリングの重要性に加え、上限規制導入に伴う救急医療崩壊のリスクなどにも触れ、医師の働き方改革と循環器救急医療の両立の難しさを訴えた。

AMIでの死亡率、PCI提供体制が影響

虚血性心疾患の中でも、急性心筋梗塞(AMI)は発症から120分以内に再灌流療法が行えるかどうかが予後に直結する。そのため、病院到着後90分以内の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行が急性期の死亡や慢性期の心機能低下の予防に有効とされる。「AMIは、緊急医療提供体制の整備状況により致命率に大きな差が生じる」と森野氏は強調する(図1)。

図1.AMIの発症から治療までの時間

医師の働き方改革、実現性が低い内容

 日本の虚血性心疾患による死亡率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最も低いレベルにある。その理由として発症数の少なさに加え、緊急PCIによる救命率の高さが挙げられる。その一方で、施設当たりのPCI術者数は中央値で4人(四分位範囲3〜7人)と少なく、過半数の施設ではPCI術者が月の半分以上の週末や夜のオンコールを担当していると考えられる。

 このように多忙なPCI術者に働き方改革を適用することについて、上妻氏は「28時間の連続勤務時間制限や9時間の勤務間インターバル、オンコール呼び出しに対する代償休息といった規制は、現状の緊急PCI提供体制を維持することを考えると、実現性が低いのではないか」と指摘。その上で「労働時間規制が適用されない宿日直許可の取得で問題解決を図ると、現実には28時間以上の連続勤務や睡眠時間を確保できないまま翌日の診療・手術を行うことになる。このような対応では、むしろPCI術者の疲労が蓄積され、患者をよりいっそうの危険にさらしかねない」と訴えた 。

「第1回働き方改革実態調査」アンケート調査結果公表

 こうした現状を踏まえ、CVITは今年3月28日~4月17日、会員所属施設のうち864施設(研修施設、研修関連施設、連携施設)を対象に「第1回働き方改革実態調査」を実施。601施設から回答が得られ、回答者の内訳は施設長や教授などの代表者が73%、医長などが27%だった。

 検討の結果、24時間体制で緊急PCI治療に対応している施設は90%に上り(図2)、循環器内科医が毎日当直している施設は48%、内科または全科の当直で緊急PCI治療時のみ循環器内科医がオンコール対応する割合は48%だった。夜間当直明けに通常勤務を続けている施設は54%で、当直明けを休日にしている施設はわずか6%にとどまった。

図2.夜間・休日における緊急PCI実施状況

(図1、2ともにCVIT提供)

働き方改革への対応については、労働時間の申請区分をまだ決めていない施設が40%に上り、当面の目標とされるA水準(年960時間/月100時間未満)で申請する施設は31%、BまたはC水準(年1,860時間/月100時間未満)は29%だった。当直体制を維持するために「メディカルスタッフの増員あるいはアルバイト勤務医を増やしたい」と答えた施設は10%で、56%の施設では「まだ決めていない」と回答した。オンコールの呼び出しに対し翌月までに与える代償休息について、「規則通り行う」と答えた施設は15%のみで、「現実には不可能だと思っている」または「まだ決めていない」の合計で80%を占めた。

 CVITは会員や地域住民に対する知識の普及や施設の集約化などを図るとともに、循環器救急医療の提供が不可能な地域の住民に対し、状態を説明していくという。

(服部美咲)
出典: Medical Tribune ウェブ

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