病院×異業種企業コラボで病院をもっと身近な存在に

  • 2023年8月11日
  • 2023年9月6日

病院が地域住民に自院の存在をアピールする手法として行われているのが「病院×異業種企業コラボ」です。病院は、異業種企業が持つノウハウやブランド力、経験を活用することで経営上のメリットを得たり、地域住民に向けて病院の取り組みをPRしています。

本記事では、病院と異業種企業がコラボすることで得られるメリットや、具体的なコラボ事例をご紹介します。

なぜ異業種コラボが増えているのか

近年、医療機関と異業種企業がコラボし、さまざまなイベントを開催しています。
なぜ、異業種コラボが盛んになっているのでしょうか。これには2つの理由があります。

地域が抱える課題へ対応しなければならないため

人口減少や少子高齢化などの問題に伴い、医療・介護従事者が減少し、高齢者や引きこもり状態にある人が社会的に孤立する問題が発生しています。また、地域住民同士の結びつきが弱体化し、孤独死などの問題も浮き彫りになっています。これらの問題を解決するために、医療機関が地域との関わりを強めるケースが増えました。

自院を効果的にPRするため

医療機関の機能分化が進み、患者確保を巡る競争が激しさを増しています。その競争に勝つため、病院独自の特色や診療機能をアピールすることはもちろん、自院ならではのイベント開催や商品開発等にも力を入れていくことで、病院の認知を広げていく活動が必要となっています。

病院と異業種企業がコラボするメリット

病院と異業種企業がコラボするメリットはさまざまです。それぞれ詳しく解説します。

企画の幅が広がる

マンパワーや資金、アイデアやノウハウを有した企業とコラボすることで、さまざまな企画を実行できる可能性が高まります。異業種のノウハウを活用することで、医療機関にはない視点で、斬新かつ面白みのある企画が実現できるでしょう。

アプローチ対象が増やせる

医療機関は、病気になって初めて来る場所です。そのため、健康な人との接点が作りにくいという特徴があります。一方で、企業とコラボすることでこれまでアプローチできなかった層との関わり合いを持てる機会を創出することができます。

発信力が強化できる

企業とコラボすることで、企業が持つ広報力を活用できます。また病院と企業のコラボは話題性を生みやすく、情報が拡散されやすいのが特徴です。メディアの露出やSNSの拡散によって発信力が強化できる場合もあるため、有効活用することをおすすめします。

ブランディングにつながる

コラボ企業のブランディング力を活用することで、自院のブランディングも効果的に高められる可能性があります。企業と医療機関の双方で相乗効果が生まれやすく、双方にとってメリットが生まれやすいでしょう。

病院と異業種企業がコラボする際の注意点

病院と異業種企業がコラボするメリットは数多く存在する一方で、コラボする際は注意しなければならない点があります。以下の点に関して留意しておきましょう。

企画運営に参加するスタッフにも楽しさを感じてもらう

一般の方に楽しんでもらうイベントを作り上げるには、まずはその企画を作り上げるスタッフ自身が楽しいと思える内容にしなければなりません。

異業種企業とコラボすることで、固定観念にとらわれず、遊び心を取り入れやすいです。うまく取り入れることで、参加者が非日常を味わうことができ、面白みが見出しやすくなるでしょう。

企画に参加するスタッフの負荷軽減につながる企画を実行する

企画運営に参加するスタッフが日常的に感じる業務負荷を、企業のマンパワーを活用して軽減することが理想とされています。スタッフの負荷軽減につながる企画が実行できれば、継続的に企画が立てやすくなるでしょう。

スタッフに参加を強制しない

企画を実行するにあたっては、スタッフに参加を強制しないことが重要です。手挙げ方式で有志を募り、自発的に企画に参加できる人材を集める必要があります。そのためには、企画をなぜ実行し、どんな目的をもって実行するのかを明確にしなければなりません。将来的なビジョンを踏まえ、スタッフに対して病院としての将来像を共有する必要があるでしょう。

企画専任者を配置する

病院によっては、スタッフが日常業務に追われ、なかなか企画を実行できない場合があります。そのため、状況によっては企画専任者を決め実行に移していく必要があるでしょう。部署ごとに適任者を1名ずつ選んだり希望者を募ったりして、役割を与えることも重要です。

病院×異業種企業コラボ事例

病院と企業がコラボした事例をいくつか紹介します。異業種同士がどのようにコラボしどのような成果を上げているか、詳しく見ていきましょう。

済生会中央病院×ユニクロ

東京都済生会中央病院には、港区のほか、品川区や大田区からも多くの患者がやってきます。症状が重く緊急性の高い三次救急に対応していることから、着替えを用意する間もなく入院を強いられる患者も多くいます。この状況を受け、ある職員から「ユニクロが院内にあればいい」という投書が病院の運営側に寄せられ、2022年3月 に「ユニクロ 済生会中央 病院店」 がオープンしました。

売り場面積は決して大きくはありませんが、移動式の什器を使い、車いすが通れるよう、通路も広めになっています。また、けがや病気で体を自由に動かしにくい人でも着脱が容易な前あきインナーやエアリズムの肌着や下着、ルームウェア、靴下といった入院患者向けと、医療従事者向けに「感動ジャケット」やシャツ、ポロシャツなどの商品を揃えています。

小倉記念病院×地元企業

小倉記念病院は、これまで住民や連携先医療機関に対する自院のPRと患者の受診ハードルを下げることを目的とし、複数の企業とコラボしてきました。小倉記念病院のイメージとして「医療レベルが高い」という認識がいつの間にか広まり、患者からは受診ハードルが高い病院という印象が持たれていました。

そのため、地域住民にもっと身近な存在と感じてもらえるよう、住民が慣れ親しんだ企業とコラボして自院の存在をアピールする取り組みがなされています。

たとえば、病院の100周年記念の際に、地元の醸造会社とコラボして 体に優しい調味料シリーズ 「100年ごはん」と呼ばれる調味料を開発しています。

また地元のプロサッカーチーム「ギラヴァンツ北九州」とコラボし、末梢動脈疾患をはじめとする足の健康をテーマとした講座を定期的に開催してきました。結果、各企画は頻繁にメディアに取り上げられ、地元住民から多くの反響を得ています。小倉記念病院は、徐々に地元住民から身近な病院であることを認識されつつあります。

千船病院×江崎グリコ、阪急うめだ本店

千船病院では、自院の診療機能や存在意義を知ってもらうために複数の企業とコラボをしています。千船病院は「地域密接型の急性期総合病院」をうたいながらも紹介受診を基本とする地域医療支援病院であるため、住民からは自院を「身近な存在」に感じてもらえていないのでは、という思いから異業種企業とのコラボをスタートしました。

たとえば、江崎グリコとタッグを組み、ウォーキングイベントを開催しました。参加者には千船病院の理学療法士による正しい歩き方をレクチャーし、江崎グリコの記念館まで歩いてもらうのです。記念館では見学ができ、かつ参加景品として、グリコ製品を試供できる内容となっています。これにより、病院の存在感を示しつつ、グリコ側も製品販売につなげられることからwin-winの関係が築けたといいます。

また、阪急うめだ本店で人気スイーツの移動販売にも協力してきました。コロナ禍においては、感染を気にして買い物に行けない患者をターゲットに、千船病院の敷地内にスイーツコーナーを設置。結果、患者だけなく、病院スタッフや地域住民からも大きな反響があったそうです。

掛川東病院×美尻企画、ビールづくり

掛川東病院は「住民のつながりづくり」を目指し各企業とコラボすることで、企業のアイデアやノウハウを活かして地域住民に貢献してきました。企業コラボをするきっかけとなったのは、 院長の宮地紘樹氏が、独居高齢者や引きこもり状態にある人たちとつながりを作るには、既存の医療制度だけでは不十分と判断したことから、各企業とのコラボに向け動き出しました。

そこで、地域住民の健康増進を目指す団体として「たわわ」を立ち上げました。ヘルスケアに参入することにハードルを感じる企業を迎え入れ、さまざまなアイデアやノウハウが得られやすくなることを狙って企画をスタートさせたのです。

中部電力と共同で立ち上げた「カケガワ美尻プロジェクト」では、美尻トレーナーを招いてフェスを開催。職員・住民向けにインナーマッスルを鍛える運動方法をレクチャーする講座を定期的に開催しています。

また、ビールづくりにも参画し人とのつながりを作ってきました。ビールを作る過程や、出来上がった後のイベントを通して、地域住民とのつながりをより深めています。結果、地元住民に病院の存在がアピールでき、経営上のメリットが得られているといいます。

[参考URL]
異業種企業とのコラボに動く病院の狙いと成果
グリコ、阪急とコラボした大阪の病院が得た「気付き」
「美尻」企画にビールづくり、目指すは住民のつながり強化
初の医療施設内店舗「ユニクロ 済生会中央病院店」を3月16日にオープン 幅広いニーズにお応えする商品の開発やサービスの充実に貢献する店舗へ

カテゴリ

アプリも使ってみてね