国立大病院、2022年度経常利益386億円、2.2%減少 ~横手会長「事業継続の危機が出る危険性」~

  • 2023年7月7日
  • 2023年9月6日

国立大学病院長会議は7月3日の記者会見で、42病院合計の2022年度決算概要を発表し、補助金等を除いた経常利益は前年度比2.2%減の386億円だった。収益は215億円増加したが、費用も552億円増加した。会長で千葉大学医学部附属病院病院長の横手幸太郎氏は「コロナ補助金や診療報酬特例などの支援があって乗り越えることができた。補助金などは廃止、縮小が予定され、事業継続の危機が来年出てくる危険性をはらんでいる」と述べ、財政支援の継続を訴えた。

横手氏

同会議の集計によると、コロナ禍が始まる前の2019年度は経常利益が215億円、経常利益率は1.5%。コロナ禍に入った2020年度以降は補助金等がなければ2022年度がマイナス2.8%、2021年度がマイナス1.0%、2022年度マイナス2.3%で、補助金等が入ったことでそれぞれ3.2%、4.7%、2.5%と黒字になっていた。

 横手氏は医療費が上昇する要因として高額な医薬品、材料の使用や働き方改革に伴う費用、賃金増と、直近では光熱水費の大幅な上昇を挙げた。減益が続くことで機器更新が難しくなり、耐用年数経過後10年以上使用している資産が891億円分、耐用年数の2倍以上使用している資産は2945億円分あると述べ、「安全な高度先進医療の実現に影響する」と指摘いた。

働き方改革に関しては、政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)に「医師が不足する地域への大学病院からの医師の派遣の継続を推進する」、と明記されたことを歓迎(『「骨太の方針 2023」、トリプル改定への前向きな議論に、日医』を参照)。「診療報酬上のサポートが得られることを切に願っている」と述べた。さらに「大学病院の教育・研究・診療機能の質の担保を含む勤務する医師の働き方改革の推進等を図る」との文言については「非常に勇気をいただいた」と話した。

働き方改革の考え方として、「とかく病院の中だけで解決させられそうになるが、それでは持続可能ではない」と強調。地域医療構想や医師偏在問題と合わせた「三位一体の改革」の推進を求めた。

 6月29日、30日に行われた国立大学病院長会議総会については三重大学医学部附属病院病院長の池田智明氏が報告。働き方改革に関し、タスク・シフトをする相手となる医療職も人材不足で確保に苦慮していることや、労務管理が厳格化されることによる事務方の負担増などが課題としてあがり、こうしたコスト増や医療DX推進のための財政支援、全医療機関が利用できる労働時間管理の統一システムの構築、大学病院の特殊性を考慮した柔軟な労働時間管理についての法整備などを訴えた。

出典:m3.com

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